てっきり完成したばかりだと思っていた高橋さんのお宅。住みはじめてすでに2年が経っていると聞いて驚いてしまった。完璧な掃除に加え、家具や小物などのインテリアがフロアと完璧な調和を見せていたからである。
「もともと同じ土地で古い平屋に住んでいたんですが、子供が生まれたことをきっかけに建て替えを決意しました。大好きな音楽とコーヒーを心地よく楽しめる空間ということでラグデザインさんに相談したんです」
高橋さんのお宅は入り口部分が通りに面し、残り三面は家に隣接している住宅密集地。設計を担当したラグデザインの社長、伊藤氏曰く「限られた敷地条件のなかでいかに豊かなプライベート空間を作り出すかをテーマにした」という。建物をL字形状に設計し、窓のある南側にはウッドフェンスを配したテラスとプライベートガーデンを施工。冷たい感じを周囲に与えないように工夫しつつ、外部からの視線をカットしている。
「リビングが吹き抜けになっているので二階からよく光が入ってきますね。見上げれば天窓から青空や飛んでいる鳥まで見える。天気が良いときはテラスでお茶をしたりと、家にいながら、まるで野外のような開放感を味わうことができるんです。建て替え前はよくカフェに出かけていましたけど、最近はめっきり回数が減っちゃいましたね(笑)」
そう話しながら高橋さんは慣れた手つきで豆を挽き、アメリカの伝統的コーヒーメーカー、ケメックスを使ってコーヒーを淹れてくれた。天然木のダイニングテーブルで湯気を上げるドリップコーヒーはなるほど確かに“飲みに来たくなる”ような味だった。
「音楽に関しては、気に入ったスピーカーセットを先に購入しました。これでJAZZを聞くことを前提に家づくりを進めたんです。いわば家の一部ですね(笑)」
高橋さんがこの家に込めた夢や希望を感じさせるいいエピソードである。今日、オーディオは壁に設けられた棚にぴたりと収まり、ファルのスピーカーは念願の四拍子を刻んでいる。
「テラスの床はタイルにして欲しいなど、かなり細かいところまでお願いしてしまったんですけど、そんな私たちの要望はすべて満たされていました。私たちにとってここは“100%”の家なんです」
最後にそう話してくれた高橋さんの奥様。掃除していると気持ちが落ち着くため、時間があるとついつい手を動かしてしまうそうだ。床にホコリひとつ、チリひとつ落ちていないのもこれで合点がいった。